ふぐは本当に昔から日本では普通に食べられてきた魚です。
そのためふぐと聞いてもテトロドトキシンがあるから危険な魚だよと言う感覚は現在の日本の人にはないのではないでしょうか。
しかし現に年間に数人はふぐの毒であるテトロドトキシンの中毒症状により救急搬送される事態になっています。
しかしそんな危険なふぐをなぜ日本人は好んで食べるのでしょうか?
確かに美味しいふぐですから好きになってしまうのは仕方のない事なのかもしれません。
しかし日本には本当にふぐに魅了されてしまった人物が数人いた事をご存じでしょうか?
今回はふぐに魅了されてしまった人物をご紹介します。
8代目坂東三津五郎
ふぐ中毒と言えば8代目坂東三津五郎と言われてしまう少々汚名を残してしまったのが、歌舞伎役者で人間国宝でもあった8代目坂東三津五郎です。
坂東三津五郎は明治から昭和の日本の歌舞伎役者として、第一線で活躍する人気の俳優でもありました。
そんな三津五郎は美食家としても知られており、大変舌の肥えた人物かと思いきや、ある日入った札幌ラーメンの店でこんなに美味しいものがこの世にあるのかと感動する一面もあったようです。
ある公演の幕間で三津五郎は板前を楽屋に呼んでフグ料理に舌鼓を打っていました。
そんな折ふぐの肝を食べたいという話になり、勿論フグ調理師免許を持っていた板前は断るのですが、三津五郎に根負けしてしまいふぐの肝を提供してしまいます。
美食家として有名だった三津五郎はふぐの肝に大変喜んだようで、もう一皿もう一皿と結局4人前ものふぐの肝を食べてしまうのです。
ふぐの肝と言えば、ふぐの部位でも特に猛毒だとされている部分で、1gから10gの肝で人間の致死量に相当するテトロドトキシンが含まれていると言われています。
当時のふぐの肝がどれくらいの量だったかは想像できませんが、四人分ともなると確実に致死量を超えてしまいますので、ふぐの肝を食べた後三津五郎はふぐ毒の中毒症状を起こしてしまうのです。
懸命の処置もむなしくなくなってしまった三津五郎の葬儀には多くの人々が参列しました。
しかし大変なのは提供した板前です。
フグ調理師免許を持っていながら三津五郎に根負けして渋々出したことが罪とされ執行猶予付きの禁固刑という判決が下されています。
小林一茶
皆さんは小林一茶という人を歴史の授業で習いませんでしたか?
おそらく習っていないという人は習ったことを忘れているのか、その日お休みしたかのどちらかでしょう。
小林一茶は日本を代表する江戸時代の歌人であり、松尾芭蕉比較されやすいですが芭蕉が生きた時代より100年ほど後の時代の人物です。
この小林一茶の代表多岐な一句に「雀さんそこ退けそこ退けお馬が通る」という物があります。
そんな一茶なのですが実は50歳にしてふぐの味を知ることになりずるずるとふぐに魅了されてしまった日本人の一人なのです。
特に一茶が呼んだ「河豚食わぬ奴には見せな富士の山」という歌があるのですが、この歌の意味は、ふぐを食べあい奴には富士を見る資格はないと言っているのです。
しかしおそらくその真意は、ふぐを食べない奴は日本人として失格だと言いたかったのではないでしょうか。
当時は武士に対するふぐ食の禁止令の真っただ中であったことから、ふぐ食を禁止している国やフグを否定している人々を軽くディスッた歌だと解釈できますよね。
自分の大好きなふぐを否定しやがって!という気持ちで読んだのかはたまたみんなも食べようぜ!著言う気持ちで書いたのかは本人ぞ知るというところかもしれませんね。
一茶のえらいところは他のふぐ好きと違ってふぐの毒にあたって死んだのではないという事ではないでしょうか。
大体ふぐ好きはふぐの肝を食べて当たるという事が多い中、一茶はそのような事がなかったようです。
おそらく死んでしまっては大好きなふぐが食べられなくなると考えていたのかもしれませんね。
ふぐを嫌いな人も居る
今回ふぐを好きだった日本人をご紹介しました。
しかし中にはふぐが嫌いだった日本人もいます。
有名どころは奥の細道で有名な松尾芭蕉ですが、芭蕉はふぐが嫌いだったとされていますが、ふぐの毒が単純に怖かっただけの様にも思えます。
というのが「ふぐ刺しや鯛もあるのに無分別」という歌があるのですが、直訳すると、鯛の刺身もあるのにふぐを食べるなんて・・・という意味です。
これは間違いなく芭蕉の心の声がうたわれた物でしょうから、やはりふぐには毒があるから自分は毒の無い鯛を食べますよぉと言う感じではないでしょうか。
フグの毒が怖いことを恥じる必要もありませんが、それよりも芭蕉には成し遂げたい事があったという事ではないでしょうか。
このように日本にはふぐを好きで仕方なかった人物が他にもいます。
勿論芭蕉の様にふぐが怖いと考える人も居ましたが、そのバランスと安全な提供により現在のふぐ食はささえられているのかもしれませんね。