「少量なら大丈夫?ふぐ毒の致死量」
ふぐの体内に蓄積されている猛毒のテトロドトキシン
そんなテトロドトキシンが含まれているふぐですから、日本では過去に多くの人々がこのふぐの毒であるテトロドトキシンの犠牲になり、命を落としてきました。
そんなふぐの毒ですが、少量なら死にはしないと考えている方も居らっしゃるようなのです。
ふぐ毒を好んで食べる人が居るのかと驚きそうになってしまうほどなのですが、舌にピリピリ来る感じがたまらないという人や、ふぐ肝を食べるなんて人も実際に散在しています。
そこで今回は、本当にふぐ毒は少量の摂取ならば大丈夫なのか、致死量はどれくらいなのかをご紹介します。
■テトロドトキシンとは
まずふぐ毒、テトロドトキシンがどのような毒なのか、という事からご説明します。
テトロドトキシンとは、ドラマなどで有名な青酸カリよりも強い毒なのですが、青酸カリもかなり強い猛毒なので、どれくらい強いのかというと、青酸カリは旧日本軍が沖縄で防空壕を離れる際に負傷兵に少量の青酸カリを飲ませて絶命させたと言われているように、本当に少量で人を絶命させる事が可能です。
そんな青酸カリのおよそ850倍の毒素を有していると言われているのが、テトロドトキシンです。
自然界の毒としては、最強と言われるマイトキシンの次に強い猛毒とされています。
ですから、言ってもればその辺にいる毒蛇なんかよりもふぐの方が強力な毒を持っているという事なのです。
毒蛇に比べてふぐが安全なのは、攻撃をしてこない為、有毒部を食さなければ毒の脅威が無いという事だけなのです。
また、テトロドトキシンの厄介なところというのは、加熱しても毒素が分解されないという事です。
通常の動物性や植物性の毒のほとんどが熱によって分解される為、加熱をする事で食べる事ができるようになるものは多いかと思います。
その代表的なのがウナギですよね。
ウナギの血液には毒があるため、生で食べるとお腹を壊してしまう事がありますが、加熱すると毒が分解される為、かば焼きや、湯引きをする事で食べる事ができるようになるのです。
しかし、ふぐは違いますよね。
加熱して分解されるようならば、ふぐの肝や、卵巣を食用不可として取り扱う必要はありませんし、加熱して食べるように心がければ、ふぐ毒の中毒者はまず居るはずがありません。
そんなふぐの毒だから危険と言われているのです。
■テトロドトキシンの致死量は
毒を測定する方法では、人間を使用できませんので、マウスを使用して実験がされています。
そのマウスの標準的な重さというのが20gと言われています。
この20gのマウスを30分で死亡させる量が1マウスユニットと呼ばれており、人間の場合には、5,000マウスユニットから1,000マウスユニットで致死量に至ると言われています。
マウスユニットでは量はわかりませんので、g数で言うと、1~2㎎と言われています。
そんな少量で致死量に至るのですから、少しくらいなら良いかと言って毒を侮っていると大変な事になってしまうのです。
テトロドトキシンによる中毒の症状は、口元や舌先などの痺れから始まります。
ですから、冒頭でお話したように、ピリピリする感じがたまらないという方は、食べている時点で既に症状が出始めていると言っても良いでしょう。
痺れから、めまいが表れ、嘔吐や呼吸困難、血圧の低下、呼吸停止の様な症状が表れます。
基本的に呼吸困難な状態にまでなってしまうととても危険ですし、呼吸停止の先には死亡の二文字しかありません。
要するに、ふぐ肝一つの重さが40gだったとした場合に、その中に含まれる毒がどれくらいか検討も付きませんが、10分の1の比重で毒が含まれていたとしても、軽く致死量を上回ってしまうという事なのです。
そんな恐ろしい部分を食べたいと思う人は本当に物好きだなと思えてしまいます。
確かに経口毒ですから、少量の場合には嘔吐によって毒素を体外へ排出する事は可能です。
この場合の少量とは0.1㎎等の場合でしょうから、嘔吐だけで済む人は基本的にいないでしょう。
ですので、テトロドトキシンによる中毒の場合には、死亡率も必然的に高くなってしまうのです。
■怖いテトロドトキシンが鎮痛剤に?
そんな恐ろしいテトロドトキシンですが、実は怖い一面だけではありません。
というのも、テトロドトキシンには鎮痛効果があり、リュウマチ等の病気の薬や鎮痛剤として用いられているのです。
そんなことを言ってしまうと、やっぱり少量ならば大丈夫なんだと、有毒部分を食べてしまう様な人が表れそうですが、目に見えない状態のテトロドトキシンが少量なのか大量なのかは判断できませんので、絶対に食べてはいけません。
あくまでも、目に見えるように結晶化もしくは液体化した状態での少量なのです。
薬剤師などの調合にて効果があり人体に影響がないような量で調整されている為、素人の判断で、少しだからはとても危険だと言えるのです。
この様に、しっかりとした手順と知識さえあれば、テトロドトキシン少量であれば安全な毒なのだと言えるのですが、知識も何もない一般人が、有毒部分を食すのはとても危険な事なのです。