ふぐを食べたいと思っている海外旅行客は意外に多く、先日私がお話しをした海外のお客様もふぐを一度食べてみたいと言っていたほどです。
しかしふぐを食べてみたいと考えている海外旅行客も、毒のあるふぐをわざわざ徐毒して食べるなんて日本人はなんてクレイジーなんだとさえ思っているようです。
そんな日本のふぐ文化の中には、同じ日本人でさえ「え?」と思ってしまう様な物が有るようです。
それが卵巣を食べるという物なのです。
ふぐの卵巣はとにかく猛毒で有名ですから、捌いた後のふぐの卵巣を食べるなんて人はほとんどというよりも、全くいない事でしょう。
中には稀に、白子と間違えて自分が捌いたふぐの卵巣を食べるという人も居ますが「よし!
卵巣を食べよう!」という方はあまりいません。
そんな卵巣ですが、食べる習慣がある地方があるという事は卵巣の独を無毒化する事ができているという事ですよね。
猛毒のふぐの卵巣を無毒化するなんてどのように行っているのでしょうか。
□猛毒の卵巣が無毒化される仕組み
ふぐの内臓である卵巣そんな部分を食べても大丈夫なの?という方も多いのではないでしょうか。
おそらく海外の人が聞くと、ふぐの卵巣を食べるなんてそんな危険な食べ物があるなんて!?と発狂してしまいそうなくらいクレイジーですよね。
ではどのような方法で食べるのかと言うと、下処理を行ったふぐの卵巣を塩漬けにします。
そのまま2年ほど付け込んだ後に、糠や麹などに半年から1年ほど付け込みます。
そうする事で完成するのが、卵巣の糠漬けと言われる食べ物です。
この卵巣の糠漬けを作っているのは石川県や福島県などの東北地方の数県の中でも、限られた地方だけなのですが、今や郷土料理として知名度を上げてきています。
この卵巣の糠漬けは、古くは江戸時代頃から受け継がれてきている食べ方であり、江戸時代頃にはふぐの卵巣の食べ方が考案されていたのですから驚きではないでしょうか。
と言うのも、現在の科学をもってしてもどのようなメカニズムによってふぐの卵巣に含まれているテトロドトキシンが分解されるのか?と言う物は解明されていません。
しかし江戸時代頃の人は、ふぐの毒であるテトロドトキシンがこの方法で分解されるという事を知っていたのです。
これはどういう事でしょうか。
皆さんなら当時の医療技術で、食べたら死ぬ可能性の方が明らかに高いふぐの卵巣を食べてみようと思うでしょうか?私は無理です。
しかし当時の人々は食べていたのですから、何かしら根拠があったのではないでしょうか。
とはいっても、この度は食べ方が考案された当時を知る人は居ませんので、どのような状況でふぐの糠漬けが考案されたのかと言う事はわからずそのメカニズムの解明に期待がかかっているようです。
乳酸菌が何らかの作用でテトロドトキシンが分解されるのか、塩漬けや糠漬けにする事で水分と一緒にテトロドトキシンが外へ出てしまうのかという事はわかりませんが、食べる事は可能になるようです。
ふぐの卵巣にはかなりのテトロドトキシンが含まれていると言われていますが、少し前まではこの方法で作った卵巣の糠漬けを食べるのは怖い事だったかもしれませんが、現在は出荷にあたってマウスを使ったしっかりとした検査が行われていますので、実はふぐのどの部分よりも安心して食べる事ができる物だといっても過言ではないでしょう。
□ふぐの卵巣の糠漬けを作る事ができるのは許可を得た業者のみ
古くは江戸時代から伝わって、郷土料理の一つに数えられるふぐの卵巣の糠漬けですが、昔はおそらく各家庭で作られていたのでしょうが、より安全性を測る為に、現在は県のふぐの処理等の規制に関する条例によって許可を得た業者が基準をクリアした施設を使って加工する事が義務付けられています。
さらに危険な卵巣を使用して作られる卵巣の糠漬けですから、各地で作る人が現れない様に、作り方などの詳しい部分に関しては秘密が守られるなど徹底的に管理を去れています。
このようにしっかりとした管理の下で作られる卵巣の糠漬けですから、安心して食べる事ができるのです。
もしもこれが、石川県の家庭で作られた物であったら食べようという気にはならないのではないでしょうか。
□安心・安全なふぐを選ぼう
今回は卵巣の糠漬けについてご紹介しました。
しかしこの卵巣の糠漬けに関しては、なぜ食べる事ができるようになるのかと言うメカニズムが分かってはいないのに、とりあえず大丈夫だからと食べる日本人の図太さが伝わってきます。
しかしそんな卵巣の糠漬けだからこそ、出荷にはより安心、安全に気を配られているようです。
このように業者や資格を持っている人が調理をする際には、本当に安全な物を提供する事に気を配ってもらえるのですが、素人調理の場合にはただただ危険なだけです。
ですからやはり安心して食べられるプロが調理した物を食べるようにしていきましょう。