日本食を代表するふぐ料理ですが、そのふぐ料理の代表的な食材といえば、ふぐの中でも王様と言われるのが「とらふぐ」です。
ふぐの中でも現在養殖がされているのが、このとらふぐなのです。
とらふぐの養殖が盛んにされるようになった為に、夏も冬もしっかりととらふぐを食べることができる様になっています。
しかし、多くの養殖ふぐは基本的には、毒がある為に毒のある場所を取り除いて、しっかりと安全にして食べる事になっています。
そんなふぐの内臓の中でも特に有毒だとされている肝(肝臓)は基本的に食すことができないと言われているのです。
しかし、肝を食べた事のある方はふぐの中では肝が一番美味しいと言われます。
しかし美味しいからと言って肝を食べて、亡くなってしまった方も少なくはなく、昔から命がけでふぐの肝を食べていたようなのです。
そんなふぐの肝も、ふぐそのものが無毒であればふぐの肝には毒が無いと言えるのではないかと考えて厚生労働省への提案をしたのが、九州は佐賀県の水産業者なのです。
ですが今や佐賀県と全国ふぐ連盟などを巻き込んでの、問題へと発展しているようなのですが、今回はそんな佐賀県の養殖とらふぐについてご紹介します。
■ふぐ肝の解禁を求める話合い
2016年2月に、餌をコントロールするとふぐを無毒化する事ができるとして、ふぐの肝の販売を解禁させたい佐賀県の水産業者から依頼を受けて厚生労働省へ養殖とらふぐの肝を食用禁止規定から除外をしてもらう「特区」の申請をしたのです。
この水産業者は、とらふぐの養殖を殺菌された海水を使用して、陸上養殖によって養殖を行っている為、餌さえ管理をしておくと無毒のとらふぐを生産する事ができるとして、養殖とらふぐの肝の最も毒性の強い部分を一つずつ検査をする仕組みを構築し、提案したようです。
依頼された佐賀県側もこの検査方法は妥当だとして評価をしているようで、町おこしの材料にしたいという期待を寄せていたのです。
しかし、これに対して全国ふぐ連盟と当時の下関市長も反対をしたのです。
その理由として全国ふぐ連盟は「検査が十分ではない」という物と「肝を食べても大丈夫だという間違った認識が広がってしまう」「もしも被害が出てしまうと、今まで積みあげてきたふぐへの信頼が損なわれてしまう」という物でした。
確かに、現在は肝には強力な毒であるテトロドトキシンが多く含まれている為、これを食べても良いという認識が広がってしまうのはとても危険ですし、ここまでしっかりと普及してきたふぐの信頼を損なってしまうと、それこそふぐ業界にとっては死活問題になりかねません。
下関市長も、やはりふぐ肝の危険性から反対の声を上げたのです。
■なかなか認められない養殖とらふぐの肝の解禁
この時の申請によっては養殖とらふぐの肝を解禁するという事はありませんでした。
その後も着物解禁を巡って何度か申請が出されていますが、なかなか許可が出ないのは、やはりふぐの毒であるテトロドトキシンが多く蓄積されている部分であり、多くの被害者を出している部分だということがその理由だと言えるでしょう。
しかし、佐賀県としてはとらふぐの肝を食べることができる町として売り出したいという思いが強い為、今後もふぐ肝の解禁を諦める事はほぼほぼ無いのではないでしょうか。
そうなると、全ての人たちが納得できる検査方法などが確立される事があるかもしれませんが、それでも危険な部分と隣り合わせの解禁になってしまう為、リスクを考えると解禁は今後も厳しいのではないでしょうか。
というのも、ふぐ連盟が唱えるように、本来食べてはいけない危険な肝を、今後間違った知識が広がる事で食べてしまう人が現れてしまう可能性もありますので、やはり危険だからだと言えるのです。
■なぜ陸上養殖だと大丈夫なのか
この業者は陸上養殖でしかもしっかりと殺菌した海水を利用しているので、無毒のふぐが育っているのですが、なぜ陸上ならば大丈夫なの?という方もいらっしゃいますよね。
これは、ふぐが体内にテトロドトキシンを蓄積してしまう理由が関係しているのですが、基本的にふぐの毒は捕食によって体内へ蓄積されます。
これは貝やバクテリアによるものなのですが、これらを寄せ付けなければふぐは生まれながらにして無毒なのですから、無毒のふぐが育つと言えるのです。
また殺菌されて陸上で養殖をされていますので、海上の微生物などが入り込む事も極めて低い為、ストレスで死んでしまう事は基本的に無いと言えます。
ですからこの水産業者のふぐにはテトロドトキシンが不要なのだと言えるでしょう。
このような理由からこの水産業者のとらふぐは肝を食べても大丈夫だと言われているようです。
このように、養殖とらふぐは確かに無毒かもしれませんが、「もしも」という事がある為解禁をされないようです。
ふぐ肝で町おこしをしたい佐賀県と全国ふぐ連盟の話し合いの着地地点に今後も目が離せないのではないでしょうか。