「ふぐ食を解禁した人」
ふぐ食は日本の伝統ですよね。
何といっても縄文時代から日本人はふぐを食べてきたのですから、有名な時の権力者の中にはふぐをこよなく愛した人も居たはずです。
例えば日本の金印伝説に出てくる奴の国は海に面していたと言われていますから、奴国王などもふぐを食べてたんじゃないかな、なんて思ってしまいます。
そんな何となく自分の中で完結できるようなロマンをくれるのもふぐ食の魅力ではないかんと思うのです。
現代では、外国人にも人気がありふぐを食べるためだけの為にわざわざ日本へ旅行にやってくる人も居ると聞きますので、いかにふぐがワールドワイドな料理になっているのかが分かります。
確かにまだまだ世界の中にはふぐの様な危険な魚を好んで食べるのは野蛮な行いだと言う人も居ますが、その様な人には一度ふぐ料理を食べて虜になっていただきたいものだと思うほどです。
そんなふぐですが日本のぶんかの中から消えてしまうのではないかと言うほどに衰退していた時期もありましたが、ある人物のおかげで回復し今の河豚文化が花開いたと言ってもいいほどなのです。
そこで今回は、ふぐ食を解禁した超有名人と背景についてご紹介いたします。
■ふぐ食が解禁されたのは明治になってから
ふぐには毒があるため、豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に多くの兵士をテトロドトキシンの中毒死によって失いました。
その為下関の辻に立札を立ててふぐ食を全面的に禁止しました。
この禁止令は秀吉が死んだ後も解禁にはならず江戸時代になっても解禁されることは無かったのです。
そんなふぐ料理に転機が訪れるのが明治27年の事だったのです。
■ふぐ解禁の転機
明治27年というと日本は日清戦争によって勝利を収め、日清講和条約が締結される年でもあります。
その会議が奇しくもふぐ禁止令が発令された原因となった場所である下関で開催されていました。
その会議で時の総理大臣伊藤博文と清国の全権大使である李鴻詳が会談を行いました。
その時舞台になったのは下関の春帆楼でした。
しかし、当時は現代のように流通が発達していない為にその日その日で新鮮な魚を仕入れる必要があったのですが、その日はたまたま天候が悪く新鮮な魚を仕入れる事ができなかったのだそうです。
しかし、会談が始まるのに料亭である春帆楼が料理を出さないわけにはいかず、女将の苦肉の策で提供したのが当時禁止をされていたふぐだったのです。
しかし伊藤博文といえば長州藩の出身者ですから、ふぐも勿論知っていますし、家禄取り潰し等の厳しい罰則を行われていた藩の上役ですので食べるわけにもいきませんよね。
しかし女将がこっそり出したのでふぐだとは気づかなかったそうです。
ふぐとも知らずに食した伊藤博文は女将を呼んで「この魚は旨い!何という魚だ?」と聞くのです。
「ふぐです」という時の言いにくさときたらなかったと思いますが、正直に伝えた女将に対して「禁令の魚だから食してしまうと死んでしまう」と言ったと言われています。
それに対しての女将の答えは「しっかりと処理をすると問題は無い」という回答だったそうです。
確かに、ふぐを食べて後に店側に効いているので伊藤博文本人も納得したそうで、「下関の河豚には毒は無し」というお触れを出してふぐ食を解禁したと言われています。
この解禁例により下関と海を隔てた福岡に限ってはふぐ食が解禁され今の河豚文化の礎ができたのです。
そう考えると、伊藤博文よりも時の内閣総理大臣であり長州藩出身の伊藤博文に良くこっそりととは言えふぐを出して、正直にふぐだと言えたもんだなと感心してしまいます。
私だったら死んでもふぐを出そうとは思いませんし、仮に出しても、「コチでございます。関門海峡のコチは荒波にもまれているので身が絞まっていてして美味しいのです」と本当の事を言えないかもしれません。
そう考えるとこの春帆楼の女将はスパーファインプレーだったんだなと感心してしまいますし、禁止中の河豚を大切な講和会議の場に出した事を責めなかった伊藤博文もかなり器の大きい人だったのだと感じます。
■山口県のふぐ条例制定は遅かった
伊藤博文によってふぐ食が解禁された後日本全国へ解禁が広がっていきます。
その中で各都道府県はふぐ条例を制定してふぐを調理する際の免許を取得させるのですが、一番早くにふぐが解禁になった下関がある山口県は制定がかなり遅かったようです。
しかしその間にふぐによる中毒者を出していないので下関の河豚料亭の河豚の調理技術と、ふぐと真剣に向かい合っていた姿勢がうかがい知れるのではないでしょうか。
このような事からふぐと言えば下関というような下関のふぐが日本のブランドになって行くのです。
確かに福岡にもふぐ料理の老舗も沢山ありますが、ふぐの解禁地である下関よりは福岡の河豚押しは弱いのかなと思います。
ふぐを供養するのも下関ですから、下関がふぐで有名になったのは当然の事だったのではないでしょうか。