ふぐにはテトロドトキシンと言われる猛毒がある為、昔から人々に恐れられていました。
その為、その恐怖心からふぐの呼び名を付けているという地域もあります。
地域もありますというのは、ふぐは古くから日本では広く食されていたのですが、現代の様にテレビや新聞で全国の状況が分かるような時代ではありませんでした。
その為、ふぐという呼び名はあっても、その地域独特と呼び名があり、今でもその呼び名が残っている物も多いようで。
その中でも有名なのが、下関地方の「ふく」です。
下関地方では昔からふぐの事を「ふく」と呼んでいるのですが、これにもしっかりと理由があります。
そこで今回は、日本各地のふぐの呼び名と、その由来についてご紹介します。
■ふく
冒頭でも少し触れましたが、下関地方でのふぐの呼び方です。
この地方では、福に繋がる縁起物として古くからふくという様に読んでいるようです。
この呼び名の為か、明治まで続いたふぐ禁止令が解禁されたのは、山口県下関からでした。
そこから日本のふぐの水揚げ量が、9割を超えるような街に下関はなり、ふぐによって日本で一番栄えている街ではないかというくらいまで、大きくなっています。
しかし、実はこのフクという呼び方は、関門海峡を挟んだ福岡でも使う呼び方の様で、下関だけの特有の物では無いようです。
というのも、確かに今は福にかけて呼んでいるのでしょうが、もともと日本ではフクと呼ばれていたという文献が残っており、フクという呼び方が正しかったのかもしれません。
ちなみにふかしは関西ではフクと呼ばれていたのですが、徐々に一般的なふぐの呼び方に若者が移行してしまったために、現在ではふぐと言う地域の中に取り残されたような状況になっています。
しかしそれを逆手に取り「福を呼ぶフク」というキャッチコピーを付けられたようなのです。
■てっぽう
大阪ではふぐの事を「てっぽう」と呼んでいます。
これは、ふぐにあたるとダメだ、ふぐにあたると死んでしまうという事からきているようなのですが、昔は刀によって斬り合いをしていましたから、織田信長の鉄砲隊から想像できるように、鉄砲というのは恐怖や脅威でしかありませんでした。
また、体内になまりの玉が残ってしまう為、当時の医学では取り除くことができず、99%の人が亡くなるという様な状況だったのです。
その為、鉄砲は人々に恐怖を植え付けていました。
そんな中、ふぐもまだまだ認知されていなかったので、食べてあたる人も居たのです。
このふぐ毒も今でさえ解明されていませんし、当時は胃の洗浄なんて手段はありませんから、やはり死亡率の高い病気でした。
その為、当たると命の無いという共通点と皮肉たっぷりのギャグからふぐの事を「てっぽう」と呼ぶようになったようです。
ちなみに、「てっさやてっちり」というのは、「てっぽうの刺身」「てっぽうのちり鍋」という事なの短縮語なのです。
■ジュッテントン
鹿児島県の志布志地方ではふぐの事を「ジュッテントン」と呼んでいるようです。
やや方言的な言葉なので、若者の中には志布志の出身者でも知らないという方も居らっしゃるかもしれませんね。
このジュッテントンという言葉の由来は、ふぐの毒にあたると、とにかく苦しんで死んでいくという事から、わかりやすく十回転んで倒れるほど苦しむらしいという様に言われたのです。
その為当初は、「十転倒(じゅってんとう)」と言われていたようですが、九州地方というのは、とにかくなまりが強い為、この十転倒がなまっていき結果、現在の現在のジュッテントンになったと言われているのです。
■キタマクラ
高知県ではふぐの事を、キタマクラと呼んでいます。
これは、ふぐを食べて毒にあたってしまうと死んでしまう事が、由来とされているのですが、死んでしまうと、葬儀を執り行いますよね。
その際に亡くなった人を寝かせる方角があるのですが、基本的には北に頭を置く北枕の状態になります。
その為、ふぐにあたったら死ぬ→死んだら北枕で寝るという事からキタマクラと言われているようなのです。
この他にも、「ナゴヤふぐ」「イカふぐ」「トミ」「ブッキン」等と各地に多くの呼び名があるようです。
■多くの呼び名があるが共通点が多い?
日本各地にふぐに関する呼び名は多くあるようです。
しかし、ふぐに関す呼び名はどれも、縁起の悪い言葉から来ているという共通点があるようです。
それは、やはり古くから日本人にはなじみの深い食材ではあったものの、調理が難しく失敗をして亡くなった人が多かったという事を容易に想像できる様です。
しかし先人たちの挑戦と犠牲のおかげで、現代の私たちは美味しく安全にふぐを食べる事ができる為、先人に感謝をしてふぐを頂きたいものです。
また、これだけ多くの縁起の悪いふぐの呼び名の中で、下関や北九州や福岡市においては福と縁起の良い呼び方が残ったのは、本当に素晴らしい事だと思いますし、できれば縁起のいい呼び名で呼んで、それにあやかりたいものですね。