「禁止令と愛され続けたふぐ料理」
秀吉の朝鮮出兵の際に下関で多くの被害者を出したふぐ。
そのため秀吉は、1592年にふぐ食の禁止を発令します。
しかし、その後秀吉が死に徳川の時代へ移り明治の世になってもふぐ料理は禁止されたままでした。
そんなふぐ料理ですが、下関条約の会議中に提供されたことがきっかけで、下関限定で伊藤博文によって解禁されるのですが、この解禁の期間中になぜふぐの調理法や食べ方が受け継いでくることができたのでしょうか。
今回は、ふぐ食禁止令とその間どのようにふぐ料理が受け継がれてきたのかを、ご紹介いたします。
■秀吉のふぐ禁止令
冒頭でもお話しましたが、朝鮮出兵の際に下関の特産品出会ったふぐを地方から出てきた兵士たちが、何も知らないが為に、ふぐの内臓までもを煮て食べてしまったためふぐの毒に当たり次々と命を落としてしまいました。
これに秀吉は大いに腹を立てたのですが、その理由は主君に捧げるための命をふぐを食べた為に落とすとは言語道断という理由だったのです。
その為秀吉は、武士や武士の家名に対してのふぐ食の禁止令を敷いたのです。
■ふぐは庶民の料理だった?
今では、高級料理のイメージがあるふぐ料理ですが、昔は庶民がこっそり楽しむ料理の1つだったそうです。
江戸時代は今までの日本史の中でも、珍しいほどに町民の文化が栄えた時代でした。
庶民と言え、中には武士に匹敵するほどの財力を持っている人が居たほどです。
ふぐ料理を食べることができない武士を相手に商売をできない商売人は庶民を相手にしなければならなかったため、高い料金には設定できなかったので庶民的な料理になったと思われがちです。
しかし、当時のふぐ料理はまだまだ発展途中の特産品として人気があったにすぎず、現代の様に日本中へ浸透しておらず、ブランドとしての強みがなかったために格安で提供できる庶民の味が提供できたのです。
更には、禁止令中という事で大きくふぐと宣伝ができない為、庶民たちはこっそりとふぐ料理を食べていたようです。
そんな庶民が食べるふぐ料理は「ふくとう汁」と呼ばれ、味噌と醤油で味付けをされたふぐの汁にニンニクと茄子を入れたものが主流だったようで、「料理物語」にも記載されています。
このニンニクと茄子ですが、実は毒消しの効果を期待して入れられていた物だという事からも当時の人々からもどれだけふぐ毒が恐れられていたかという事がうかがえます。
正確には、ニンニクは薬効で茄子が毒消し効果だったようですが、本当にそのような効果があったのかは定かではありませんし、試してみようとは思いませんから、謎のままですね。
そんな、ふくとう汁ですが鍋物の様なイメージですので、冬の食べ物の様な感じですよね。
実際にふぐと言えば冬が旬と言われていますので、ほとんどの方が、そのようなイメージでしょう。
しかし、ニンニクと茄子という夏野菜を使用している事から、当時の人々は夏にふぐを食べていたのだと思われています。
昔は今のように、ハウス栽培なんてものはありませんし、輸入何て物も勿論ありませんでしたから、間違いないですよね。
■武士以外には人気だったふぐ料理
ふぐ料理は本当に多くの人達に人気がありました、その人気ぶりは俳句などにも読まれるほどで、松尾芭蕉はその光景を見ながらふぐは恐ろしいという様な内容の俳句を、そして小林一茶は本当にふぐが好きでたまらないと言ったような俳句を読んでいます。
そんなふぐ料理ですから、日本の伝統料理というような位置付けの料理で、更には高級日本食という様な物になってきたのです。
■今のふぐ料理があるのは庶民のおかげ
現代におけるふぐ料理がしっかりと根強く浸透したのは、禁止令にも屈せずふぐ料理を食べていた庶民のおかげと言っても過言ではないでしょう。
もしも、秀吉がふぐ料理を武士だけに限定せず、一般庶民にまでも禁止令を強要していたならば、ふぐ料理は日本を代表する料理の1つにはなっていなかったでしょう。
更に、ふぐの毒を怖がってもしも食べていなければ、ふぐ料理の発展は無かったでしょう。
そんなふぐ料理が安全にしかも日本全国で食すことができる、高級料理になるとは、当時の日本人は勿論、秀吉すらも思いもしなかったでしょう。
ふぐ料理が高級品として扱われる様になった背景は数あると思いますが、一般人では処理ができない魚であるという事が一番ではないでしょう。
そんな高級食材であるふぐですから安全にそして美味しく食べるべきなのです。
もしも、現代の法律でふぐ食が禁止されるような事が実際に起こると、秀吉のように罰則の対象になる人やならない人という様な、決まりは作られず、全ての国民に対して禁止という様な措置になってしまうはずです。
その様になってしまうため個人で調理をするなどの危険な行為は避けるべきだと言えるでしょう。
外国人観光客の増加に伴い人気が増大しているふぐ料理ですから、今後も外国人向けのサービスなどで進化をしていくことでしょう。
そんなふぐ料理ですから、是非外国人観光客にも、日本の文化と一緒にふぐの味を堪能してほしいものです。