ふぐと言えば超強力なテトロドトキシを体内に持っているため、食す際にはしっかりとした知識と腕が必要に中ります。
先日知り合いのふぐ調理師がいるのですが、とらふぐを釣り上げたのでふぐを捌いて欲しいと依頼をしてみました。
しかし現在その方が務めているお店ではふぐを扱っておらず、ふぐの調理から数年間は慣れているのでふぐの調理は資格があってもお断りさせていただきますとの事でした。
このように、しっかりとした知識を持っている人でもふぐの調理には細心の注意を払うのですが、素人の人の中には知識も腕もないのにチャレンジ精神だけでふぐを捌いて食べるなんて人が多いようです。
そんなふぐ食の文化が始まったのは日本では縄文時代ごろからだといわれています。
当時はふぐに関する知識はもちろんなく、ふぐを食べる際には有毒部も無毒部も一緒に食べて居たようです。
その為ふぐによる死者も多く、ふぐの骨と人骨が同時に出土するなんて遺跡もあるようです。
しかし中にはふぐの骨の身が貝塚から大量に発見される遺跡もあることから、ふぐを食べても大丈夫だったのは無毒のふぐがいたのではないかという都市伝説があったりもします。
今回は本当に昔のふぐには毒が無かったのか?という事について考察してみましょう。
□縄文時代ごろはふぐには毒が無かった?
冒頭でもお話したように、ふぐの骨が貝塚などから大量に出土する事からふぐを食べても問題のない時代があったとされるようなのですが、これには少々無理があるかなと思います。
そもそもふぐという魚は、かなり遠方まで泳ぐ魚であり日本で放流した個体がオホーツク海で発見されるという事もあるほどです。
そのため多くの海域で生息し成長して帰ってくるのですから、行ってみればふぐの分布は近海の海にとどまらないといえるでしょう。
そんなふぐは食物連鎖の中で毒を体内に蓄積するという事がわかっているのですが、テトロドトキシを生成する生物やバクテリアが当時日本の近海の海にはいなかったと仮定するならば無毒のふぐがいたと説明できるとされているのですが、ふぐは前述したようにとにかく泳ぎますので、日本近海以外に行きそのような生物を捕食する可能性はあるのです。
そのため完全に無毒のふぐが存在していたとは考えにくく、やはり縄文時時代にもふぐは毒魚だったと考える方が自然なのです。
むしろ貝塚から出土されたふぐの骨と人骨と同時に出土したふぐの骨に数年のタイムラグがあると考える方が自然ではないでしょうか。
□海辺の集落ではふぐの食べ方が確立されていた可能性
縄文時代のふぐが無毒だったと考えるよりも、出土しているふぐの骨に数年のタイムラグがあると仮定するともう少し現実的な話になるといえるでしょう。
というのも、ふぐを食べたことにより死者が出ていたのだと原因がわかれば、ふぐを食べたけど自分は死ななかったという人も出てくるはずです。
そうするとどこを食べて大丈夫だったかという情報交換が始まり、ふぐの捌き方が海辺の集落では広まっていきますよね。
危険なら食べないでしょ?と思う人も居るでしょうが、釣りに行くとひたすらふぐしか釣れない時もあります。
現代の私たちは生活のために魚を釣らなくても売ってありますから購入すれば良いですが、当時は釣れた魚を食べる事しかできなかったでしょう。
そうなると否が応でもふぐを食べなければなりませんので、ふぐの食べ方の情報交換は必然的に行われていた事でしょう。
そうするとふぐの食べ方を知った人たちは安全にふぐを食べるようになりますので、勿論貝塚にもふぐの骨が大量に捨てられるようになります。
特にふぐは岸から釣れる魚としてもポピュラーですのでそれはそれは大量に消費をしていたと考えても良いでしょう。
これは少し後の時代でもふぐが変わらず食べられていることから、ふぐの安全な食べ方が縄文時代の頃には海辺の集落では確率されつつあったのではないかといえるでしょう。
そもそも現代のふぐの調理方法も誰がどのようにして伝えたのかも定かではないはずです。
というのも江戸時代には日本人は安全にふぐを食べる術を得ていましたし、その前の世でもふぐを食べる術を得ていたようですから、本当に古くから受け継がれてきた伝統的な食文化なのだといえるでしょう。
またやはりふぐによる死者が出ている可能性があることから、ふぐは縄文時代も無毒ではなく有毒であったが、人々の情報交換によって安全に食べて居たと考える方が自然ではないでしょうか。
私たち現代人の中には、まだまだ危険を冒してふぐを食べようとする人も居ますが、現代は縄文時代よりもはるかにふぐの除毒技術が向上していますので、その様な危険な食べ方をする必要はないといえるでしょう。
もしもふぐがどうしても食べたいのであれば、市場に行けば売ってあります。
良く暇がなければインターネット等で取り寄せもできるようになっていますので、わざわざ危険を起こすという事はしないようにしましょう。