「ふぐを捌く際に必要な免許」
ふぐには猛毒のテトロドトキシンという毒が含まれています。
その為、素人が安易に調理をしてしまうと、ふぐの毒に当たってしまい命を危険にさらしてしまうという事もあり得るのです。
このふぐ毒には、古来より多くの人たちが命を奪われていますので、かなり危険な魚なのです。
しかし、ふぐは日本を代表する日本食の代名詞であるため、人気の高い食材でもあります。
その為、各県で条例を定めて、ふぐを捌くための免許を設けています。
今回はそんな、ふぐを捌く際に必要とされる、免許についてご紹介いたします。
■ふぐの免許や資格は都道府県単位
冒頭にもお話ししましたが、ふぐに関する免許や資格に関しての取り決めは、都道府県単位での取り決めとなっています。
ちなみに、ふぐ料理の老舗が多い、山口県ではふぐ調理士免許と言い、この資格を習得するには、「衛生法規」「食品衛生学」「ふぐに関する知識」の3科目の学科と、「ふぐの種類及び臓器の鑑別」「ふぐの処理の技術」と言った2科目の実技を合格する事で習得ができます。
また、大阪府ではふぐ取扱登録者という資格で、この資格を習得するには「食品衛生関係法規」「食品衛生学」「ふぐに関する知識」の3科目の学科と「ふぐの処理に関する実技」1科目の講習を受ける事で取得する事が可能です。
素人目には、しっかりした山口県のふぐ調理士免許の方が、実技があるので安心なのかと思ってしまいがちですが、講習も適当な講習ではないのでどちらの資格を所持している板前さんが捌いたふぐでも安心して食べる事ができるのです。
この様に、ふぐを捌く際に必要な免許を取得する方法としては、試験を受け合格する事で取得できる場合と、講習を受けるだけで取得する事ができる場合とがあるようです。
この様に試験で取得できる県と講習で取得できる県があるのも、県単位での取り決めとなっていて、国家資格ではないふぐに関する資格の特徴なのです。
■講習で資格を取得できる県
試験が無いので時間さえあれば、ふぐに関する資格を取得する事ができる県は大阪だけではありません。
講習だけでふぐを捌くのに、必要な資格を取得可能な県は全部で6件あります。
その県というのは、「大分県のふぐ処理者」「佐賀県のふぐ取扱者」「岡山県のふぐ調理者」「大阪府のふぐ取扱登録者」「福井県のふぐ処理登録者」「山形県のふぐ取扱者」となっています。
また試験にて取得できるのは、20県あります。
その県は「埼玉県のふぐ調理師」「千葉県のふぐ処理師」「東京都のふぐ調理師」「神奈川県のふぐ包丁師」「富山県のふぐ処理師」「石川県のふぐ処理資格者」「静岡県のふぐ処理師」「愛知県のふぐ処理師」「滋賀県のふぐ調理師」「京都府のふぐ処理師」「奈良県のふぐ処理師」「鳥取県のふぐ処理師」「山口県のふぐ処理師」「香川県のふぐ処理師」「愛媛県のふぐ取扱者」「高知県のふぐ処理師」「福岡県のふぐ処理師」「熊本県のふぐ処理師」「宮崎県のふぐ処理師」「鹿児島県のふぐ調理師」となっています。
更に講習と試験を受け取得できるとなっている県も1県あるのですが、それが「三重県のふぐ取扱者」となっています。
これを見るとふぐに関する資格を定めている県は全部で27県となっており、他の20の県には資格の取得を義務付けていないようです。
■ふぐの文化は山口県が発祥だが資格は違う?
ふぐの調理には県が定める資格が必要です。
ふぐ食の文化が発祥した山口県は、実は最近までふぐの取り扱いに関する資格の取得を義務付けてはいませんでした。
というのも、山口県では伊藤博文が認めた通り、かなりの処理技術があり資格を義務付けなくても、ほとんどふぐ毒による中毒の報告がなかった事がその原因の様です。
その為「ふぐ条例」を定めている全ての県の中でも一番制定が遅く、1981年に「ふぐ調理師」という名の資格を設立しました。
ちなみに最初に「ふぐ条例」を制定したのは大阪府で1948年だったようです。
この様に、他の県がふぐ条例を定めていなくても、しっかりとしたふぐの処理が行われていましたが、より消費者に安心を提供するために、条例が定められたようです。
更に、当時「ふぐ条例」が制定されていなかった山口にはちょっとした逸話が残っているのです。
というのも、大阪府が「ふぐ条例」を定めて16年後の1964年に昭和天皇が下関に行幸した際に、中毒の恐れがあるからとふぐを食べる事が出来なかったそうです。
それに憤慨した昭和天皇は、自分たちだけふぐを食べていた従者に対し「ふぐには毒があるのだぞ」と」恨めしそうに言ったそうです。
もしも、当時の山口県で「ふぐ条例」が制定されていれば、昭和天皇もふぐの本場下関でふぐ料理に舌鼓を打つことができたのかもしれませんね。
その際ふぐを食べる事が出来なかった昭和天皇は他のイワシなどの季節の魚には舌鼓を打たれ、大変満足されていたそうです。
いかがでしたでしょうか。
今回はふぐを捌く際の資格や免許についてご紹介しました。
ふぐを捌くにはしっかりとした知識が必要になりますので、安易に素人調理をしないようにしましょうね。