ふぐが体内に毒を持つ理由
ふぐに毒がある事は昔から当然のように語り継がれてきました。
しかし、 日本人はふぐに魅せられて古くからふぐを日本食の代表のように扱ってきたのです。
しかしふぐの毒は厄介なもので、青酸カリよりも強く人間を死に至らしめるには少量でも十分だというのです。
そんなふぐですが、膨れた時の姿が愛くるしいなどと女性には観賞用としても人気が高いようです。
しかし、なぜふぐは毒を持っているのでしょうか。
今回は、ふぐが体内に毒を持つ理由とメカニズムをご紹介いたします。
■毒を持つ理由は
陸上の生物にも毒を持っている生物というのは多く存在します。
中には、捕食の為に毒を持ったもの、また外敵から自分の身を守ると言った生存の為に毒を持った物とがいます。
捕食の為に毒を持つ生き物の代表格としては沖縄で有名なハブなどが存在します。
基本的に捕食する生き物が使う毒は神経毒が多いようです。
これは、相手の動きを封じてから捕食すると言った目的があるためです。
しかし、身を守る為に毒を持つ生き物の毒は言ってみれば一撃必殺なんて感じの毒が多いようです。
これは、身を守る為には中途半端な毒を持つよりも俺を食ったら死ぬぞと、言った方が身を守る効果があるからではないでしょうか。
また、陸上の生物よりも海の生物の方が大きいためか、海の生き物の方が、毒が強い事が多く、ふぐなどはそのいい例として、テトロドトキシンは青酸カリの800倍以上の猛毒とされています。
■ふぐの毒はどのように作られる
ふぐの毒は体内や皮に含まれていますが、ふぐの体内では量産されていないという事をご存知でしょうか。
というのも、もともと生まれたてのふぐには毒が無いという事が発見されたのです。
この発見まではふぐは体組織の中で毒を作り出すと思われていましたが、実際には食性によって毒を体内に蓄積していくようです。
そのメカニズムはというと、まず海中のテトロドトキシンを生成する微生物のビブリオ菌をヒトデや貝などの底生性生物が食べて、テトロドトキシンを体内に蓄積させます。
その体内にテトロドトキシンを多く含んだヒトデや貝などの底生性生物をふぐが食べる事によってふぐの体内に蓄積されていきます。
その為、ふぐの毒は「食物連鎖によって生物濃縮」されています。
■ふぐが毒を持つ理由
先にお話しいたしましたが、ふぐだけに限らず毒を持つ生物には、捕食と自己防衛を目的としていますが、ふぐの毒が自己防衛の為にあるのであれば、皮に毒を持つだけで良いのではないでしょうか。
しかし、ふぐの卵巣は猛毒として知られていることから、自己防衛以外にも理由があると言われています。
その理由とは、メスが雄を誘うフェロモンの役割を果たしているというものです。
テトロドトキシンを多く含む雌のふぐの卵巣に雄のふぐが引き寄せられる為、メスのふぐは卵巣に多くのテトロドトキシンを蓄積しているのです。
■人間が死ぬテトロドトキシンでふぐは死なない
ふぐがテトロドトキシンで死ぬことはありません。
それは、テトロドトキシンがナトリウムイオン・チャンネルというたんぱく質と結びついて細胞と細胞の信号のやり取りを妨害するために、人間は神経がやられ、手足がしびれ、呼吸困難になり、最悪の場合死んでしまいます。
しかしふぐのナトリウムイオン・チャンネルは人間の物とはタイプや形が違う為、毒が作用しない為ふぐはテトロドトキシンで死ぬことはありません。
その為、ふぐは体内にテトロドトキシンを大量に蓄積する事が可能なのです。
■小さいふぐほど猛毒
大きいふぐは外敵から襲われる事も少なくなるからか、小さいふぐの方が猛毒を持っていることが多いです。
これは厳しい食物連鎖を生き抜くための手段なのでしょうが、人間から言わせてもらうと、猛毒でも素量がそんなに多くなくても危険な事に変わりはありませんので、そんなに毒を持たなくても良いと言ってやりたいところですね。
■捕食者からの防衛だけではない
先にお伝えしたように、雄のふぐを呼び寄せるフェロモンの役割をしているふぐの毒ですが、そもそもテトロドトキシンが体内になくても、子孫残せるでしょと思いませんか。
しかし、ふぐが体内にテトロドトキシンを保有するのにはもう一つ理由があるのです。
体内にテトロドトキシンが無いと、寄生虫の危険にさらされてしまうのです。
海の中には様々な寄生虫が存在していますので、このような寄生虫からの自己防衛にもテトロドトキシンは活躍しています。
また、体内から毒が無くなってくると、ストレスがたまり、仲間同士で噛み合うような行動をとる事もあるそうです。
きっと体内から自分を守るものが無くなる事で、不安になってしまうのではないでしょうか。
そんな一面を見てしまうと、ふぐも人間も同じだなと思ってしまいますね。
■毒があるから余裕がある
毒を多く体内に含むふぐですが、海の中でプカプカ浮いているのか泳いでいるのかわからない様子を見ると、愛らしくどこか余裕があるようにも見えますよね。
そんな余裕も体内のテトロドトキシンのなせるものなのかもしれませんね。