無毒なふぐの作り方
ふぐと言えば猛毒なテトロドトキシンが含まれていて、素人調理では危険だというのがこれまでの見方だったのではないでしょうか?
しかし、最近では養殖ふぐというものが出回っており、無毒だという情報もあるくらいです。
では無毒のふぐを現実的に作る事は可能なのでしょうか?
■ふぐは元々毒が無い
そもそも、ふぐには毒がありません、というのもふぐの体内でテトロドトキシンが作りだせるわけではないのです。
ではなぜ市場に出回っているふぐには毒があるのかというと、ふぐの食生活に問題があります。
ふぐの餌と言えば、貝やヒトデですよね。
良く聞く話かもしれませんが、夏の貝には毒があると聞いたことはありませんか。
いわゆる貝毒というものです。
また、ヒトデにも毒のある種が存在します、このように食物連鎖の過程の中でふぐ貝やヒトデを食すことで体内にテトロドトキシンが蓄積されてしまいます。
しかし、ここで疑問がある方もいらっしゃるかと思います。
その疑問とは、なぜふぐは毒で死なないのか?という事です。
そもそもふぐは、自分の体内に蓄積する際に、一度に大量に毒を摂取するわけではありませんので、貝毒や、ヒトデの毒で死んでしまう事は無いですし、「ナトリウムイオン・チャンネル」というたんぱく質と結びつき細胞同士の信号のやり取りを妨害するのです。
その為人は神経が痺れて死に至る事もあるのですが、ふぐはこのチャンネルとはタイプが違う為に、ふぐはテトロドトキシンで死んでしまう事は無いのです。
■生け簀で無毒のふぐは作れるのか
では、海に生け簀を作りその中でふぐを養殖すると無毒のふぐが作れるのでしょうか。
答えは作れません。
その理由としては、生け簀を海の中に沈めると生け簀の回りに貝類の生き物が生息を始めます、ふぐが餌だけを食べると良いのですが、人間の思う様にはいかないもので、勿論その貝類を食してしまうふぐが出てきます。
そうすると、貝を食べてしまい体内に毒を蓄積し始め、結果有毒のふぐになってしまいます。
また生け簀の中にいるふぐ全てが有毒にはならないのではと思われるかもしれませんが、無毒のふぐの中に一匹でも有毒のふぐが混ざった時点で全てのふぐが毒化してしまいますので全てが有毒のふぐになってしまいます。
さらには、ふぐの毒は寄生虫などから体を守る効果もありますので、無毒のふぐには寄生虫がついてふぐが死滅してしまう事もあるようです。
■無毒のふぐを作るには綺麗な水槽が必要
ではどのようにしたら無毒のふぐを作る事ができるのでしょうか。
まず、無毒のふぐを作るには、底生性生物を完全に遮断する必要があります。
底生性生物とは貝類や、タコ類の主に海の底に生息している生物の事です。
ではこの底生性成物からふぐを隔離するためにはどのようにしたら良いのかと言いますと、単純に考えると、水槽のようなもので隔離してしまえばいいのです。
と言っても海の中で隔離をしてしまうと、貝類などの物は小さいうちは動物性のプランクトンとなりますので、これらが水槽の中に入ってしまう可能性があります。
更には、毒の無いふぐには寄生虫が付きやすく寄生虫の影響で死んでしまう可能性がありますので、リスクが高くなります。
そこで、水族館のように海の外に水槽を作り、性能の良いポンプを使い、水をくみ上げる事で完全に隔離す事ができます。
そうする事で無毒のふぐが作れ、今では猛毒で知られるふぐの内臓まで食べる事が可能になっています。
■条件を満たしても大変な養殖
条件を満たしてもふぐの養殖は大変なもので、ふぐを1つの水槽で稚魚から育てると共食いをしてしまう事もあるため、かなりの神経を必要とします。
中には延縄で成魚を捕獲して養殖をしているところもありますが、この場合にはふぐは成魚になるまで海で生活している為、有毒になっていますので普通のふぐと扱いは同じとなってしまいます。
■無毒のふぐの養殖に成功している県
お話したように、無毒のふぐを育てるのはかなりのコストと注意が必要です。
しかしこの難関を克服して無毒のふぐを提供している企業がありますが、それは栃木県の那珂川町にある養殖業者です。
ここではふぐ養殖に関わる多くの難問を克服し、見事養殖のふぐを提供しているようです。
この養殖ふぐは、温泉水で養殖されているため、毒性の生物が居らずまた、寄生虫の危険も回避できているという事で、見事に自然の力を味方につけて養殖されています。
また、完全無毒とのことで、猛毒とされる肝も食すことができるとのことで、かなりの美味とのことでした。
しかし、コストと手間が掛かるからか現在要養殖されているふぐはとらふぐのみで他の種類のふぐは養殖がされていません。
需要があまりないからかもしれませんね。
■自宅でふぐを飼う
この記事を読んで、とらふぐを自宅で食塩水を作り育てると無毒のふぐが作れて自宅で宴会なんて事も可能になるのかもと考えていらっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、ふぐは意外とデリケートな生き物ですので世話が大変です。
更に、何かしらの手違いで毒持ちになる可能性だってありますので、むやみに飼育して食べようなんて考えてはいけませんよ。
しっかりした品質管理の上で養殖されてこそ安心して食卓に並ぶことができるのです。