とても強いテトロドトキシンを体内に多く有しているふぐですが、調理をする際にはしっかりと資格を持っている調理人の手によって処理をされる事が各県の条例によってきめられています。
その為、現在はふぐ毒の食中毒になってしまう人は居ないと思われていますが、実のところそうでもありません。
というのも、釣り人が釣ったふぐを持ち帰り、自分で調理をして食べてしまう事があり、その際に毒のある部分を食べてしまうのが一つの原因なのです。
更に、無毒とされているカナトふぐ(しろさばふぐ)と毒を有するクロサバふぐやドくさバふぐを間違えて食べてしまう事もあり、現代においてもふぐ毒による食中毒は無くなってはいないのです。
私は、ふぐを食べないから安心だと思っている方でも、身近でふぐ毒にあたる方が出ないとは限りませんよね。
ですので、ふぐ毒による食中毒の場合にどの様な症状が出るのかを知っておく事は、決して無駄な知識ではないでしょう。
そこで今回は、ふぐ毒の中毒によってどのような症状が出るのかをご紹介します。
■テトロドトキシンの特徴
古くから多くの人々の命を奪ってきたふぐ毒の正体はテトロドトキシンと言う、自然界で2番目に強力な毒だとされているのです。
特に強いと言われている、毒でサスペンスドラマや某有名アニメでお馴染みの、シアン化カリウム(青酸カリ)のおよそ850倍の強さを持つ毒なのです。
と言っても、青酸カリとテトロドトキシンでは作用が違う為、経口毒としての致死量の違いという事になるのですが、青酸カリでも猛毒と知られているのですが、それよりも強力な毒だと言うだけでも、かなりの強力な毒だという事がお分かりいただけるかと思います。
そんなテトロドトキシンの特徴は、麻痺を引き起こす神経毒であり、経口毒であっても外傷性の毒としても作用が期待できてしまうと言うところにあります。
また、テトロドトキシンはいまだに研究がされている毒であり、性質が極めて特殊なため解毒剤が存在していないのが特徴です。
テトロドトキシンと言う名前は、ふぐの毒だと言う意味があるのですが、毒の名前にも付けられるほどふぐと言えばテトロドトキシンだと昔から言われていたという事がうかがい知れるかと思います。
■テトロドトキシンの症状
テトロドトキシンの中毒症状は、食後20分くらいから表れる場合もあるのですが、3時間ほど経っても症状が表れない事もあり、食後直ぐであれば、直前に食べたふぐが原因だと判断もしやすいですが、3時間後であれば、原因が素人では特定しにくいという事もあるようです。
そんなテトロドトキシンの代表的な症状は、唇や舌先の痺れや指先の痺れです。
その他にも、頭痛や腹痛、腕の痛みを伴うなどの症状が現れ、歩行困難や嘔吐、言語障害や呼吸困難、血圧の低下が起こるのです。
嘔吐や腹痛だけであれば、通常の食中毒かもしれませんが、その他に痺れや言語障害などを伴う場合にはテトロドトキシンの中毒を疑う事が大切です。
また、テトロドトキシンによる致死時間(死に至る時間)は4時間から6時間と言われている為、もしも町中でそのような症状を訴えている人を見かけた場合には、直ぐに救急車を呼ぶようにしましょう。
このような症状が起きてしまうのは、テトロドトキシンが神経系の毒だからです。
と言うのも、麻痺を引き起こしてしまう毒ですから、呼吸器系やその他の神経系への麻痺を起こしてしまうのです。
■テトロドトキシンの中和
テトロドトキシンは先にお話したように、まだまだ良く解明されていない為、解毒剤が開発されていないのです。
その為、もしもテトロドトキシンによる食中毒になってしまった場合には、医療機関へ行っても、解毒剤が無いため苦しみは続いてしまいます。
それならば、病院へ行く意味がないと言う方も居らっしゃるかもしれませんが、それは違います。
病院では、胃の洗浄などの応急処置をする事で一命をとりとめる事ができると言われています。
しかし、テトロドトキシンには呼吸困難を引き起こしてしまう効果があるため、その場合には、呼吸困難や呼吸麻痺が原因で死んでしまう為、無理にでも酸素を送り込む為に、人工呼吸をし続ける事が大切だという事はお分かりいただけるのではないでしょうか。
人工呼吸をしない時とした場合では、生存率が大幅に高くなるのです。
■今回の知識を使わないのが一番
今回ご紹介したお話は、基本的に使用しない事が好ましいでしょう。
しかし、実際にテトロドトキシンによる食中毒がまだまだ起こっている状況ですので、この話を知っていて損は無いでしょう。
そもそも、食べてはいけない、やってはいけないと言う事をしないという事が一番なのです。
それは、やはりふぐの素人調理を行わないという事です。
そして、もしも本当にふぐを食べたいのであれば、しっかりと専門的な知識を持った調理師が調理したふぐを食べる事が大切だと言えるのです。