ふぐが好きという方は多いですよね。
日本人とふぐは切っても切れない不思議な関係のまま、古くからふぐの持つテトロドトキシンという強力な毒と付き合ってきた歴史を持っています。
例えば事実上のふぐ禁止令の原因となった、秀吉の朝鮮出兵。
この時に地方から集まった多くの兵士たちが、下関で初めて見るふぐを捌き食べてしまった事により、いのちを落としてしまったのです。
それに腹をたてた秀吉はふぐの絵を描いた看板を立て「この魚食べるべからず」とふぐを禁止にしました。
このふぐ禁止令は秀吉の死後も、江戸や明治といった世の中まで続き、日清戦争の会談の場であった下関会議の時に伊藤博文がふぐを口にしたことによって解禁されます。
そんな危険なふぐを食べるのは日本人だけではありません。
世界には多くのふぐ食文化があり、日本以外の国でも危険な調理でふぐが食べられています。
ですが自然界を見てみると、ふぐを食べるのは人間だけではないか?と疑問に思ってしまう時ってありませんか?
そこで今回は、そんなふぐを他の動物も食べるのかという事をご紹介します。
□カモメはふぐを食べるのか?
海で鳥と聞いて連想する鳥はどのような鳥でしょうか。
私の場合はカモメなのですが、カモメはふぐを食べるのかな?と疑問になった事がある方って意外に多いようです。
それは特に釣り人やサーファーなどの、比較的海で遊んでいる人たちに多いようです。
これは、海でカモメを観察していると何となく理由がわかります。
ふぐを投げておくと、カモメがやってきてふぐを食べようとするのです。
しかし私は実際にカモメがふぐを食べたシーンは見た事が無く、飲み込むのかという事は何とも言えません。
しかし多くの場合には、ふぐだと気づくと目もくれず飛び立つか、口にくわえるものの直ぐに吐き出すといった行動をとるようです。
そう考えると、自分で調理をしてふぐを食べ中毒症状になってしまい病院に運ばれる私たち人間よりも、カモメの方が本能で危険だと察知しているのかもしれませんが、利口なのではと思わされます。
しかし中にはふぐを食べるカモメもいるようで、この場合には中毒症状は起こさないそうです。
という事はカモメのクチバシにはふぐの毒であるテトロドトキシンを感知する部分があるのではないかと思うのですが、テトロドトキシンについてもっと研究が進めばその辺の事も良く分かって来るのではないかと思います。
□ふぐを食べないのはカモメだけではない
勿論ふぐを食べたら人間だけではなく、テトロドトキシンに耐性が無い動物は中毒死してしまうでしょう。
その為ふぐを食べないのは、実はカモメだけではなく多くの海の捕食者たちも食べないとされています。
中にはイルカの様にふぐを加えて遊ぶものもいますが、ふぐを食べてしまうという事は無いようです。
おそらく本能の中にふぐは危険だという事がインプットされているのでしょうし、人間の様に危険な部分を取り除いて食べる事ができない捕食者たちにとってふぐは食べる事ができない邪魔な存在でもあるのかもしれません。
特に大型の捕食者にとっては、一度に多くの魚を丸呑みする種もいますから、誤ってふぐを食べてしまう事もあるのではないか?と思うのですが、ふぐを食べて大型種が死んだという話は聞きませんので、やはりどこか本能的にふぐを避けているのかもしれません。
□ふぐの毒は天敵から身を守るだけではなかった
ふぐが体内にテトロドトキシンを蓄積する体質になってしまったのは、おそらく大型の捕食者から身を守る為だったのではないでしょうか。
そう考えると現在のふぐは捕食者から捕食される機会は劇的に少ないはずですから、毒蓄積作戦大成功と言えるのではないでしょうか。
しかしふぐが体内にテトロドトキシンを蓄積するのは何も捕食者から身を守る為だけではないようです。
実はふぐのテトロドトキシンはオスを呼ぶためのフェロモンとしても、効果があるようで産卵期にはこのテトロドトキシンのフェロモンに誘われて多くのオスのふぐがメスへとおびき寄せられるのです。
また寄生虫から身を守る事へも一躍買っていますし、テトロドトキシンを保有しないふぐと保有しているふぐとでは、ストレスや病気になってしまうリスクも違い様です。
このようにふぐの毒であるテトロドトキシンは、ふぐが生きていく上で大いに役に立っているようです。
□ふぐを食べるのは基本人間だけ
このようにふぐはカモメも大型の捕食者たちも食べない魚のようです。
という事はふぐを食べるのは私たち人間だけだという事になりますよね?そう考えると、動物も食べないふぐなのだから、もう少し食べる側はふぐが危険な魚だという事を認識する必要が有るのではないでしょうか。
そうする事で素人調理によってふぐを食べて、ふぐの毒であるテトロドトキシンによる中毒で命を落とす人、病院へ搬送される人というのが減るのではないでしょうか。
ふぐは危険な魚です。
だからこそしっかりとしたプロの技術によって調理されたふぐを食べる必要が有るのです。