ふぐの毒が強力だという事は、皆さんも知っていらっしゃる事実ではないでしょうか。
現代の医療においてふぐ毒に当たってしまっても、命を落とすという話はあまり聞かなくなりましたので、ふぐ毒が驚くほど危険だと考えていないという方も少なからずいらっしゃる事でしょう。
ですが、現在もふぐ毒であるテトロトキシンに対する解毒剤という物はなく、胃の洗浄という形でしか処置ができない為危険な毒だという事には現代でも変わりはないと言えるでしょ。
そんなふぐの毒ですが、自然界の毒としてはマイトキシンに次ぐ2番目に強力な毒だといわれています。
あんなに小さなふぐの体内にそれだけ強力な毒があるという事は、昔の人たちはきっと考えもしなかった事でしょう。
しかしなぜふぐはそのように強力な毒を体内に持つ必要があったのでしょうか。
今回は、そんなふぐが強力な毒を持つ理由やテトロドトキシンについてご紹介します。
■テトロドトキシンってどんな毒
テトロドトキシンと聞いて皆さんがまず思いつく事とはどのような事でしょうか。
おそらく危険だとか、強力だとか言う事ではないでしょうか。
確かにテトロドトキシンというと、危険でさらに強力な毒だという事は間違いないと言えるのですが、詳しく説明しましょう。
そもそもふぐ毒であるテトロドトキシンはふぐの体内で生成されるものではなく、ふぐのエサとなる貝や微生物の体内で作られます。
このふぐのエサである生物の体内で生成されたテトロドトキシンをふぐが捕食と同時に体内へ取り込む事で、ふぐにテトロドトキシンが含まれるようになうのです。
また、ふぐはこのテトロドトキシンを体内へ蓄積するという事ができる為、自分で作った毒ではないテトロドトキシンを保有する事ができるのです。
たまに、ふぐは毒のある生物を食べているのになぜ死なないのかという事が言われていますが、ふぐにはテトロドトキシンに対する耐性がある為に、テトロドトキシンによって死んでしまうという事は無いのです。
そんなテトロドトキシンですが、どれくらい強力な毒だと思いますか。
というのも、ふぐの毒は冒頭でもお話ししたように、自然界でも強力な部類に属している為、かなり強力だと言えるのです。
その強力さはというと、皆さんは青酸カリという毒物の名前を聞いた音はありませんか。
良くサスペンス物や某有名アニメなどで耳にする毒物の名前なのですが、その昔旧日本軍が動けない兵士に自害をさせる為に用いたとしても有名な非常に危険な薬物です。
この青酸カリですら少量で人を殺す事ができるのですが、ふぐに含まれるテトロドトキシンはこの青酸カリの850倍ほどの強さを持っているのです。
ですから、極端に言うと青酸カリの致死量と同じ量のテトロドトキシンで850人の人を殺害する事ができる物だという事なのです。
■ふぐが体内に強力なテトロドトキシンを保有している理由
テトロドトキシンの強力さを知れば知るほど、なぜそんなに強力な毒を体内に保有する必要があるのだろうかと、思ってしまうという方も少なくはないですよね。
それには理由があるのですが、基本的に陸上に生活している動物に比べると、海洋生物というのは大型の物が多いというイメージがありませんか。
身体が大きいという事は、その生物を死に至らしめる毒の量である、一般的に致死量と言われる毒の量も必然的に多くなります。
しかし毒を沢山蓄えておくと体もそれだけ大きくなくてはいけませんし、内臓などの部分にもかなりの進化が求められるはずです。
しかし、強力な毒であれば致死量も少なくて済みますので、体内に蓄えておく毒の
量も少なくて済むわけです。
このため確かにテトロドトキシンを保有するのは、危険から自分自身を守るためだと言えるのですが、それでも強力なテトロドトキシンを蓄えているのは、海洋生物が大きい為に、致死量が必然的に多くなってしまう為、より致死量が少なくて済むテトロドトキシンがベストだったのでしょう。
■ふぐの持つテトロドトキシンは危険すぎ
このように、かなり強力なテトロドトキシンというふぐの毒は、人間のナトリウム系チャネルに作用をして、体をマヒさせるという様な毒になっています。
ですから、ふぐ毒に当たると呼吸困難になってしまうなどの症状があらわれてしまうようですが、これに対する解毒剤という物は前述したようにまだ確保されていないのです。
また、解毒剤が無いだけならいいのですが、ふぐ毒であるテトロドトキシンはまだまだ研究の段階である為に、詳しいことが良く知られていないのです。
その為医療機関でも、胃の中の洗浄をするという様な応急処置のような治療しかできない為行けるか死ぬかはほぼ運任せといったような状況にもなっています。
このような話を聞くといかにふぐの毒が危険なのかという事がお分かりいただけるかと思うのですが、だからこそ素人調理でふぐを食べるという事は絶対にしてはならないと言えるのです。
