夏のふぐは危険?
ふぐの延縄漁を見ていると、夏場は禁漁期となっている事が多いかと思います。
しかしながら夏ふぐは美味しいとの噂もされていますが、一方夏ふぐは危険だという情報もあるようです。
これには何の根拠も無いようなのですが、夏のふぐが危険だから禁漁期間を設けてあるとする説は、なぜ生まれたのでしょうか。
■夏のふぐが危険とされる理由
そもそも夏のふぐが危険とされる理由は、ふぐの食性が原因のようです。
というのも、皆さん一度は耳にされたことがあるかと思いますが、夏の貝には毒があるという話がありますよね。
その延長戦で、ふぐが夏の毒を持つ貝を食べる事が原因でふぐの毒が強くなるという理屈の様です。
しかし、おかしな話ではないでしょうか。
なぜなら、ふぐは一年中毒のあるヒトデや貝を食べる生き物です。
貝のように夏場だけ気を付けたら毒が無いというような生き物ではありません。
なので、この夏場のふぐは危険だという説は、あまり気にする必要が無いように思います。
■夏にふぐ漁をする事もある
夏場のふぐは危険ではありません。
それを証拠に関東より北の地域では夏場にふぐ漁が最盛期を迎える地域もあります。
このふぐはとらふぐではないのですが、しっかりと夏場でもふぐ漁は行われているのです。
このことから、夏のふぐは毒性が高まり危険だから禁漁期間に入るという説は成り立たなくなってきます。
ではなぜ禁漁期間を設けているのでしょうか。
■禁漁期間がある理由
ふぐ延縄漁の禁漁期間は地域によって違いますが、9月ごろに解禁を迎える山口県を皮切りに北へ向かって解禁していくような傾向があります。
これは他のふぐと違い冬場には産卵をしないとらふぐを保護する狙いがあるのではないでしょうか。
どういう事かと言いますと、一般的に、ふぐの産卵時期は主に冬とされています。
このことから冬には産卵前で、白子などが充実していて特に美味しくなる季節だといわれています。
しかし、とらふぐは春から初夏にかけて産卵を行いますので、夏の間に卵から孵化した稚魚がやや大きくなり、立派なとらふぐへと成長していきます。
そんな稚魚の段階で延縄の針に掛かってしまうと、逃がしても死んでしまうと言った事がおきてしまいます。
それを避けて、海の大切な恵みであるとらふぐを守り、過去の乱獲により激減してしまったとらふぐの量を少しでも増やしていこうという漁師の方々の優しさのように感じますね。
■夏のふぐが危険でも危険ではない
今まで夏のふぐは危険ではないとお話させていただきましたが、そもそもふぐ料理屋さんなどで提供されているふぐに夏ふぐだから危険だとか冬ふぐだから危険ではないだとかは関係ないはずです。
なぜかと言うと、それはふぐを調理する方は、専門的な知識を持ち更にはふぐの有毒部分は全て取り除いた後に皆様に提供されるのですから、有毒な部分にたとえ普段よりも多い数値の毒があっても、まったく問題はありません。
しかし、仮に有毒部分に普段の数倍の毒が含まれているとするならば、この超猛毒のふぐを素人が調理してしまうと更に危険だという事です。
しかし、これは冬のふぐが危険ではないと言っているのではありません、冬のふぐであろうが、夏のふぐであろうが、更には春や秋のふぐでも毒があるので素人が調理すると危険な事には変わりありませんので絶対に素人調理は絶対にしないようにしてください。
■夏場のとらふぐは海に帰す
釣をしているとたまにとらふぐが釣れることがあります。
そんな時には高級食材だなどと思い持ち帰らないようにしてください。
何故?と思われている方もいらっしゃるかと思いますが、しっかり考えていただければお分かりいただけるかと思います。
その理由は二つです。
一つ目は、釣り人の多くはふぐの調理師の資格を持っておられないので、素人調理となってしまいとても危険だという事です。
そしてもし仮に冬場に調理して大丈夫だったとしても、都市伝説のような夏場は猛毒説が正しければ、少しのミスで命を落としてしまう可能性も十分に考えられます。
更には、ふぐは決まった場所で処理をしなければならないという決まりがありますので条例違反となり罰金の対象などになってしまう事も考えられるからです。
そして二つ目は、先ほどお話したのが理由です。
それは、春先から初夏にかけて産卵し、孵化して成長途中の可能性もありますし、成長してすぐの可能性だってあります。
自分ひとりくらい良いやと思う心はきっと自分一人ではなく多くの心無い人が思う物なのです。
そして多くの自分一人くらい良いやがふぐ延縄漁で生計を立てている漁師さんや、とらふぐを大切に育て守っていこうとされている漁協の方々の思いを踏みにじり、更には生活を苦しめてしまう結果に繋がってしまう可能性があるのです。
■みんなでふぐを保護
ご説明させていただいたように、夏のふぐにたとえ毒があっても、プロが調理をする事で危険ではないという事がお分かりいただけましたでしょうか。
夏場にはとらふぐを捕らずみんなで守り未来へ、美味しい天然のとらふぐを残していきましょう。