その歴史は古く縄文時代まで遡るのですが、縄文時代の貝塚からふぐの骨が出土していることからそのように言われています。
縄文時代にはふぐの調理技術なんてものは存在していませんので、多くの犠牲者の上にふぐを食べるという文化が構築されたのでしょう。
その後も明治になり昭和になるにつれてふぐの安全な調理法が見つかり、構築されたおかげで現在の私たちはふぐを食べても江戸時代の人たちのように、ふぐの毒で死んでしまうのではないかなんて考えなくても良くなりました。
しかしふぐ食が始まってから数千年が経ち自然界の状況という物は少し変わってきました。
それは天然のふぐの中にも起きており、天然のふぐが今まで以上に危険な物となっています。
今回はそんなふぐの変化についてご紹介します。
□自然界で始まったふぐの変化とは?
天然物のふぐと言うと高級な食材として出回っていました。
しかし最近では、天然のふぐの危険性が増しており、天然物を避ける業者もいるようです。
天然物の何が危険なのかと言うと、通常の有毒部位ではないところが有毒になっている個体が存在しているという事です。
どういう事かと言うと、とらふぐで説明するならば、通常食べる事ができる身・皮・白子の部分のどれかが有毒になっているという物です。
なぜこの様な事が起こっているのかと言うと、ふぐが雑種化しているからなのです。
ふぐの雑種化と言ってもピンとこない人も多いでしょうが、乱獲により数が減った個体はどうしても子孫を残そうとする場合に、違う種類のふぐと交わり子孫を残そうとします。
そうすると全く新しい特徴をもったふぐが誕生し、このふぐは毒のある場所が親ふぐのどちらとも異なっているため、有毒部分を特定する事が出来ないのです。
このようなふぐを新種のふぐと言う人も居るかもしれませんが、混ざり合っていますので雑種ふぐと呼ばれています。
このようなふぐが最近は増えており、提供する側としては非常に恐ろしいことですので、天然物のふぐに頼らざるを得ない状況になってしまうのです。
□雑種が増えているからこそプロが必要
例えば自分で釣ったふぐをかえって食べようとします。
しかしそのふぐが雑種であった場合には、今まで素人調理でたべていたけれど大丈夫だったという人も有毒部位が違うわけですから勿論何も知らずに食べてしまうわけです。
そうすると勿論ふぐ毒中毒になってしまいますので、救急搬送という形になってしまうでしょう。
その様な事にならないためにも、雑種が増えている今だからこそプロの確かな腕や知識が必要になります。
有毒部位が特定できないとしても、毎日ふぐを捌いているプロのふぐ調理師ならば、本来のふぐと雑種のふぐの違いに気づく事ができますので、提供してしまい事故が起こるという事はまずありません。
このようにふぐ調理師が捌いていれば雑種と気づけたというような状況になってしまわないようにするためにも、ふぐ調子免許を持った人が捌いたふぐを食べるようにしましょう。
□ふぐの毒はどれくらい危険?
ふぐの毒はどれくらい危険かご存じでしょうか?
基本的にふぐの毒であるテトロドトキシンは熱分解もされませんので、過熱をしても普通に残っています。
そのため焼却をした後に薬品をかけて処理をするほどなのです。
基本的にテトロドトキシンの毒素は青酸カリの850倍と言われており、青酸カリのように解毒剤が存在しないのも特徴です。
なぜ解毒剤が無いのかと言うと、テトロドトキシンはとても複雑な構造になっているため、研究はされているのですが、まだまだ毒の正確な構造が解明されていないのです。
そのため病院に搬送をされたとしても、胃の洗浄と人工呼吸器による無理やりの呼吸の確保が施されます。
これはテトロドトキシンが代謝により分解されるまでの時間を稼ぐための応急処置であるだけで、生きるか死ぬかは本人の運任せとなっています。
昔は死亡率100%の強力な毒でしたが今は少々の中毒症状であれば、何とか一命を取り留める事ができるようです。
しかし助かる確率も100%ではないため年間に数人の人が亡くなっているため、絶対に口にしてはいけない毒だと言えるでしょう。
テトロドトキシンによる中毒症状は基本的にすぐには現れず、約20分ほどしてから発症します。
そのため症状が現れてすぐには何で嘔吐しているのか、なんで頭痛がするのかわからないという状況になってしまい、重篤化した時には呼吸すらできなくなっていますので、助けを呼ぶことができない状況になってしまいます。
もしも夜中に症状が出てしまったらと思うとゾッとしますが、基本的にふぐ調理師が調理したものであれば問題はありませんので、安全なふぐは沢山食べても大丈夫です。
もしも自分でふぐを食べた後に頭痛や吐き気が現れた場合には迷わず救急車を呼んで病院に向かうようにしましょう。
ですが基本的に素人調理でのふぐ食は禁止されていますので、ふぐを個人で捌く事はしてはいけませんよ。